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ウイスキーボトル

ウイスキーボトル

「北欧の人に下戸はいないと聞きます。これは月夜にバーに向かう紳士かな」。(撮影:織田 憲嗣)

極めて珍しい、タピオ・ヴィルカラ直筆のガラスボトルです。裏側にはサインも。彼は活動の分野が幅広くて、記念切手やお札、コイン、ウォッカボトルなど日常生活のあらゆるものをデザインしていました。その中でもこうした絵付けはとても珍しい。絵が表情豊かで人柄を感じますね。見つけたのは、私の話にときどき登場する京都のヴィンテージショップ「ビージェネレイテッド」で、ほかのものと合わせて分割払いで買いました。タピオ・ヴィルカラがこういうものもデザインした、という資料として面白いと思ったんです。私が今でもこうしてコレクションをふやしているのは、残しておかなくてはという義務感と焦りによってです。人手に渡って、もう一度私の前に現れるなどということはあり得ない。好き嫌いだけで選べたらどんなに楽しいだろうと、これまで何度思ったか知れません。

数年前に札幌で展示会を頼まれたときのこと。それはほぼ丸投げの企画で、私とスタッフ1名だけで搬入から搬出まですべて行わなくてはならなかったんです。搬入日、展示作業が終わって疲れ果てた私が壁にもたれ床に足を投げ出している様子を見て、スタッフが言いました。「展示作品みたいですね」。すかさず「タイトルをつけるなら“モダンデザインの奴隷”だね」と返しました(笑)。私はこれまで本当に、酒タバコはもちろん娯楽というものをほとんどしないで生きてきました。以前もお話ししたと思いますが、デザインミュージアム・デンマークの館長アン・ルイス・ソマーさんが「織田コレクションはひとつひとつに物語がある。だから世界で唯一無二なのです」と言ってくれたのは、お世辞ではなく事実だからなんです。テレビに某鑑定番組がありますが、あの中で扱っているものは単なるモノにすぎません。出演者も鑑定するだけで研究者ではない。私も3回くらい出演依頼をもらったけど、断り続けています。所有するだけではなく履歴を掘り下げて研究し、それを誰にでも見られるようにするのが私の義務と責任。彼らとは方向性が違いすぎます。

(2026/06/19・談)

【取材を終えて】

2025年秋から取材が始まったこの読みものシリーズは、織田先生の小さなものへの愛情を主軸に展開しています。今回のインタビューで、「小さくても魅力がある」という先生の言葉から、1960年頃のフォルクスワーゲンの広告「Think small.(小さいことが理想)」に話題が及びました。燃費のよさや操作性、保険料の安さをアピールし大きなアメリカ車を牽制する広告戦略です。この広告は私が通ったコピーライター養成講座の教科書にも載っていて、「あれは秀逸だったね」と盛り上がりました。「好きなものを必要なぶんだけ」は多くの現代人が(特にシニア世代)行き着く暮らし方の理想型だと思います。先生はその「必要なぶん」がふつうの人よりちょっと多いだけなんですね(笑)。

──── コピーライター 西川 佳乃

宣伝会議発行のテキスト(昭和56年2月28日5訂版)より。

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