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真鍮の鳥のペーパーウェイト

真鍮の鳥のペーパーウェイト

タピオ・ヴィルカラ「lintu bird」は体長約10㎝。鈍い金色が映える黒いケースがそのまま台座に。(撮影:織田 憲嗣)

東神楽の家の新しいオーナーが、2025年秋に契約を交わしたとき「この家を引き継いだ記念として」と、プレゼントしてくれたものです。1975年kultakeskus社(くるたけすくす、と発音するようです)で製造されたペーパーウェイト。札幌の自宅では、前回この欄で紹介したカイ・フランクのガラスの鳥と並べて飾っています。長く暮らした家を手放すのは、もちろん簡単な決意ではありませんでした。引っ越すときは去り難く、とても辛かった。今でも、こうしてウグイスの鳴くこの森に戻って来ると幸せな気持ちになります。しかし現実的に、この家を維持するのには手間と時間と労力がかかりすぎました。薪割り、薪積み、草刈り、冬は雪かき…。そのひとつひとつが仕事の合間にできるほどたやすいものではなく、荒れた庭を横目に原稿を書かなければならないのは本当にストレスでした。それを22年続けてきてついに限界がきたということです。記念品はよい心の区切りになりました。

私は不器用な人間です。何かを達成しようと思ったら100対0、ほかをすべて捨てて没頭しないとできません。だから織田コレクションのために犠牲にしたものは決して少なくない。だけどこの、自分が劣った人間だという思いがここまで私を伸ばしてくれたんです。人より劣っているんだからもっと努力しなければ、といつも自分を奮い立たせてきました。コンプレックスを持つのは悪いことではありません。卑屈になることなく、それを補う努力をすれば自分の成長につながります。人は、“人並み”なんかじゃなくていいんです。不得手なことを無理に克服するより、得意なことをうんと伸ばせばいい。

一方で、私にも得意なことがあります。美しいものが好きという強い思いと美意識、そしてそれを見分ける審美眼です。身のまわりを美しく整え、心地よく暮らす。美しい人、美しい風景、美しい環境を愛する気持ちにおいては、確かなものを持っている自信があります。(左腕を差し出し)大学時代に買ったこのロレックスも、その頃からものの寿命の本質を見抜いていた表れだと思います。

今の人は、総じて美醜に無関心。洋服ひとつ取っても、ファストなものが幅を利かせています。人は安易に買ったものを大切にしないから、資源の無駄遣いになり環境破壊にもつながる。美の価値観は時代とともに変遷していくものですが、普遍的な美というものは存在します。特に若い人に伝えたい。自分自身に対するスタンダードラインを高く設定しておくこと。それは、人生全体によい影響を与えます。

(2026/04/28・談)

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